川根本町移住ナビ

理想のライフスタイルを求めて~猟師になりたい若者たち~

こんにちは。川根本町の情報発信・PRを担当している地域おこし協力隊のみゆちゃんです。先日、わな猟の免許を取得しました。実は川根本町で猟師になりたい若者が急増しています。

田舎暮らしと言えば「スローライフ」や「自給自足」。猟師は農作物を守るためにも、貴重なお肉を獲るためにも大事なお仕事です。

今回の記事では、どうしたら猟師になれるの? 猟師だけで生きていけるの? 気になる猟師への道をベテラン猟師さん、新人猟師さんからお話を聞いてご紹介します。

猟師の現状

一般社団法人大日本猟友会 年代別狩猟免許交付数の推移

静岡県の中山間地域にある川根本町では、猟師の高齢化・人手不足により農作物の獣害が深刻です。

「このままではいけない!」 高齢化の激しい猟師の世界に20,30代の若者が新しく弟子入りしました。

メンバー紹介

メンバー紹介と目次

今回の記事ではベテラン猟師「殿岡邦吉さん」の猟師観とその「弟子たち」の事例を紹介します。「狩猟」と言うと漫画や映画から憧れる人も多いでしょう。

2021年から猟を始めた若手猟師のインタビューをきっかけに、猟師に興味のある人が実際に猟にでる手助けができたらと思います。

【目 次】

1ページ→みんなの師匠「ベテラン猟師の殿岡邦吉さん」紹介

2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみさんが考える猟師ビジネス

3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい

4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで

5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観

6ページ→ジビエについて・ジビエ副産物を利用したい方へ

*狩猟には第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)、第二種銃猟免許(空気銃)、わな猟免許、網猟免許の4種類あります。

*猟師とは山で猪や鹿などの野生動物を狩る人です。自分がやりたい猟の免許や資格が必要になります。

狩猟ポータル……猟についての基礎知識はこちらから。

猟師のInstagram……川根本町の若手猟師がInstagramを始めました。

  

【猟師歴52年】 殿岡 邦吉

殿岡邦吉さん(わな猟・第一種銃猟免許)

猟師になった経緯は?

20歳の頃、里山に鹿や猪が出没することから抑止力として猟師を始めた。うさぎ猟から始めて、増えすぎた鹿や猪などの大物猟も駆除の目的で行うようになった。2年前(2020年)からは猟師一本で生活している。川根本町で唯一、ジビエ加工できる猟師だよ。

猟師の仕事とは?

猟師の1日のスケジュールとしては、普段は午前中にわなの見回りしている。もし動物がかかっている場合はそのまま止めさしをして、午後は解体をするね。精肉はスピード勝負だから、夜中までかけて行うこともあるよ。

捕れた動物はジビエ肉(野生動物のお肉)に加工して、飲食店に卸して無駄がないようにしている。最近じゃあ、鹿肉やイノシシ肉は珍しいからみんな食べたがるよ。

竹林にわなをかける殿岡邦吉さん

猟へのこだわり

猟師は趣味ではなく、獣害被害の抑止力としてやっているよ。

だから、猟はスニーカーで行けるような集落や道路近くの山しか行かない。鹿や猪が農作物を食べてしまうような被害を抑止するには、集落に出てくるものを駆除してやらないと意味がないわけじゃん。だから、あえて山奥に行かない。これが一番効果的だよ。それをすることで被害がガクンと減る。

この間、農家さんから「動物に豆が食べられた」と電話があっただけんな、その日にわなを仕掛けたら次の日には鹿が獲れた。その後は畑の被害はなくなって豆はみんな収穫できたみたいだよ。猟を通して農家さんのお役に立てれば一番良いわけだよ。

鹿に食べられた豆

猟師は残酷だと言われてしまうこともあるけど、獲る理由と目的がある。だからこそ、獲った命は大事にしたいと思うよ。かわいい、かわいそうと思うこともある。その気持ちを振り切ってやらなければいけない職業。

猟師のことを又鬼(またぎ)というが、「又、鬼になる」と書く。命をとるときは情け容赦なく命をとってやんなさいということ。速やかに、楽にしてあげるべき。

これから猟師になりたい人に向けて

殿岡邦吉さん

猟師になりたいという人がいたらねぇ……ウェルカム! ぜひ、来てください。

ただ、僕が教えられることは限りある。本来は猟っていうのは自分の工夫次第だよ。入り口までは導けるけれども、あとは自分の努力、工夫がないと猟師は確立できないものなの。

ジビエはまだまだ売り先がある。いかに効率よく被害防止をしながら、獲ったモノ(肉、毛皮などの副産物)を何とかうまく活かして商品に変えていくような技術を広げていかにゃじゃんね。

そうすることによって、鹿一頭が、今までは猟師が焼肉にして食べて満足していたものがレストランで美味しい料理に化けたり、毛皮も今までは穴掘って埋めてたやつがおしゃれなポシェットになったり、何とでもなるわけじゃん。そういったところまで手広くできる猟師が理想。

自然の山の恵みをいただいてうまく活用するのが猟師なんだよ。

自分の座右の銘は「為せば成る」

わなを自作する殿岡邦吉さん

猟師としてやっていることは独学のモノも多く、自分で勉強し工夫したものばかりだね。

何事も、悪く言えばすべてをなめてかかる。あの人ができて自分にできないはずがない。全てはやりようであるってね。そうすることで、努力も辛抱も工夫も考えもできるようになる。

自分のように猟だけでも生活できるが、(これから猟を始める人には)その道のりがちょっと遠いだけ。最初は生活するために猟師をしながら別の仕事をして、段々と技術を身に着けていきながらその比重を傾けていけば良いよ。

移住者の方へ

心配だと思う。でもね、為せば成るんだよ。

そうするとね、田舎の人はみんな気優しいから。それでね、困ったら、「私困ったわ。誰か助けて」って信号出せばみんな感知してくれる。誰となしに手を差し伸べてくれる。ほいで、いよいよ困って「私もう悩んじゃった。私もうこんな田舎無理かもしれない」って悩んじゃったら俺んとこくりゃいいだよ。そいじゃ、なんとかなるわ!

いつまでも限界集落のままじゃ困るだよ(笑)

新規入猟者が増えて嬉しいと話す殿岡邦吉さん

まとめ】

川根本町には捕った獲物をジビエ加工できるベテラン猟師さんがいます。猟と聞くと「動物を殺すの?!」と聞かれることもありますが、田舎には欠かせない職業となっています。過疎化が進む川根本町で、地域の存続や猟師の高齢化を心配する殿岡さんは新人猟師の育成にも力を入れています。

次のページからは、殿岡さんのもとで猟を学んでいる新人猟師の4人を紹介します。

目次

【目 次】

1ページ→みんなの師匠「ベテラン猟師の殿岡邦吉さん」紹介

2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみさんが考える猟師ビジネス

3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい

4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで

5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観

6ページ→ジビエについて・ジビエ副産物を利用したい方へ

  

【女子大生猟師】松浦あづみ

松浦あづみさん(わな猟)

静岡県浜松市にある静岡文化芸術大学(デザイン学部)の4年生。大学3年の時にゼミで川根本町と関わる中で町民の温かさに触れ、夢だった田舎暮らしを叶えるため川根本町への移住を決断。大学卒業後は川根本町内にある会社に勤めながら猟師の腕を上げる予定。

猟師になったきっかけは?

川根本町に移住したいなと考えていたタイミングで、川根本町にあるCafe Grandmaというジビエカフェに行きました。そこで、猟師の存在を知り、本当に猟師がいるんだ!と感動しました。猟師になりたいとまでは考えていなかったのですが、ジビエが食べたいので自分で捕れたら素敵だなと思い、連絡先を教えてもらって猟師の殿岡さんのところへ見学に行きました。

いざ、猟師の仕事に触れる中で猟師の後継者不足という現状に触れ、自分が若いこともあり「私が何とかしなくては!」と思いました。と言うのも、大学のある浜松市(静岡県)から川根本町に移住すると決めたばかりで、田舎での自分の役割が欲しいと思っていました。

殿岡邦吉さん(右)から動物の形跡を教わる松浦あづみ(左)

もともと自分の性格的に、社会でうまくやっていくのは難しいと感じていました。自分はきっと、それなりの会社で事務とかをして、それなりの人生を生きていくんだろうな~と思っていました。ただ、本当は自分なりの人生を歩みたかった。

川根本町にある民泊「あ!そび庵」でハンモックに揺られる松浦あづみ

田舎は好きでしたし、大学の授業で移住に関する研究をする中で、地域と関わり実際に自分が川根本町に移住する現実性が高まっていました。川根本町に移住したいと思い、仕事について悩んでいるタイミングで猟師を知り、猟師になることを決めました。

移住を決意した理由

同年代と話していて、田舎に興味がある人は結構います。ただ、一人だと移住しよう!までにはならない。私はたまたま、大学のゼミ友達三人と川根本町に関わりました。

大学の研究の一環で、学生が卒業後そのまま田舎に移住する「新卒移住」を川根本町に提案。
ゼミ生:左から吉川有紀、渡辺実優、松浦あづみ

三人とも田舎暮らしや地域活性化の仕事に興味があったこと、ゼミの活動の中で川根本町では若者が輝ける場所があると分かったこともあり、結果全員が川根本町に移住しました。

自分一人での移住だったら、きっと不安だらけだったと思います。ただ、三人いたから、お互いの近況を報告をしあう中で「そんなこともできるんだ!」「私もやってみよう!」と感じることがたくさんありました。

みんなで「あなた移住するの?じゃあ、私も…」「え、本当に移住する?」「実は私も移住したい…」みたいなかけひきもあったと思います(笑)

川根本町が大好き。地域の方にたくさん応援してもらっています。
ゼミ生:吉川有紀(左上)、松浦あづみ(左下)、渡辺実優(右下)

現在、ゼミ仲間三人のうち私は猟師になりましたが、一人は地域おこし協力隊として活動、一人は経営参謀(現在は結)という川根本町の地域活性化をする会社でインターンをしながら川根本町で生活しています。

実際に移住するにあたり

大学生が田舎に移住する際の3大課題は「家・車・仕事」です。大学生ですからお金も車もなくてどうしようと悩んでいました。

私達の場合は、大学の研究でお世話になった地域の方が使わない車を無償で貸してくれたり、頑張っている学生だからと空き家を貸してくれたり。地域の方のご厚意もあって、意外と何とかなりました。

私達の今後について一緒にたくさん考えてくれた地域のみなさん。

ありがとうございます!!!

感謝してもしきれないです

猟師を仕事にすると決めてから

仕事としてやっていけるかは不安でした。

また、給料などが安定していない猟師になることについて親から反対されていました。自分自身、猟師だけの収入で生活することに不安があったので最初は別の仕事でお金を貯めることに専念しようと決めました。 3年くらいは猟師を学びながら別の仕事をして、技術を身に着けたらビジネスとして成り立つようにしたいと考えています。

鹿の解体方法を学ぶ松浦あづみさん

おそらく、猟師になるにあたり、前例を知らなかったことも不安の一つだったと思います。私は現在大学四年生ですが、大学の卒業論文で「猟師のビジネス化」について調べたことで猟師に関わる仕事が珍しくないことが分かりました。他の地域だと地域共有でジビエの加工所を持っていて、そこに就職している人がいる。お肉として安定的に配給する仕組みがあることが分かりました。

今後について

川根本町のお肉を安心して買ってもらうために国産ジビエ認証をとりたいです。また、お金を貯めたら自分たちでも加工所を作りたいです。他にも、女性猟師さんや学生起業した猟師さん、皮加工やジビエ加工食品を作る人がたくさんいることが分かったので、事例を分析して事業として計画していきたいと思います。

一緒に猟師を目指す渡辺実優(左)と松浦あづみ(右)

学生→移住者に向けて

大学にいると、どうしても就活して都会や地元の企業に就職する人が一般的だと思いますよね。しかし、コロナ禍で働き方も変わってきています。その中で大学卒業後にそのまま田舎に移住するという選択肢もあることを知ってほしい!まずは私がその前例になりたいと思います。

まとめ】

大学時代にゼミで川根本町に関わり、猟師として移住することを決めた松浦さん。今後は川根本町で同じ大学から移住した渡辺実優さんと、猟師が仕事として成り立つような仕組みづくりをしていきます。猟師としての仕事が川根本町でも制度化できれば雇用に繋がり、限界集落の川根本町にも若い人が増えるのではないでしょうか。

次のページでは、松浦さんと同じ大学で地域おこし協力隊の渡辺実優さんを紹介します。

【目次

1ページ→みんなの師匠「ベテラン猟師の殿岡邦吉さん」紹介

2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみが考える猟師ビジネス

3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい

4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで

5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観

6ページ→ジビエについて・ジビエ副産物を利用したい方へ


【自給自足に憧れて】渡辺 実優

渡辺実優さん(わな猟)

静岡県浜松市にある静岡文化芸術大学でデザインを学ぶ。大学のゼミで川根本町に関わり、大学4年生の6月に地域おこし協力隊として移住。主に地域の情報発信・PRの仕事をしている。自給自足に憧れ猟師として修業中。

川根本町へ移住した経緯は?

渡辺実優(右)と松浦あづみ(左)

私の人生の目標は田舎でのんびり自分らしく生きること!仕事と私生活のバランスを考えた時、金銭的な豊かさよりも心や時間にゆとりある生活を大切にしたいと思いました。

大学3年生のとき、ゼミの関係で川根本町に関わりました。そして、町民のみなさんが驚くほど色々なことに協力してくれました!地域との関わりを通して、「川根本町は自分がやりたいことを実現できる町だ」と確信しました。

学生が提案したプランに真剣に耳を傾ける町民の皆様。
手前の白い服が渡辺実優。

その後、川根本町で地域活性化ができる仕事を探していたところ、役場の方から「地域おこし協力隊」の仕事を紹介してもらいました。地域おこし協力隊とは過疎地域に人を呼び込み、地域に関わる仕事をしてもらうという総務省の制度です。

こんな機会は二度とない。当時大学4年生の6月でしたが地域おこし協力隊に応募しました。そして、大学のあった浜松市(静岡県)から川根本町(静岡県)へ移住。コロナの影響もあり、川根本町に住みながら週に一回のゼミをオンラインにしてもらうことで何とか仕事と学業を両立させました。

猟に行くきっかけ

自給自足に憧れて畑を耕していたので、猟へ行くきっかけは「お肉も食べれるようになりたい!」という軽い気持ちでした。

ベテラン猟師の殿岡さんのところへ初めてご挨拶に行ったとき、「猟に興味があります。見学してみたいです!」と緊張交じりに挨拶したところ「良いよ~」と軽いお返事。今では猟のみならず人生の師匠として、色々なことを教えてくれます。

御夕飯に招いてくれたり、車や家の相談まで乗ってくれるため、勝手に第二の実家のように感じています笑

殿岡家のご夕飯にお招きいただいた時の写真
料理上手な殿岡 直美さんの手料理!自家製のお茶も美味しかったです!

猟を始めて感じたこと

鹿の解体を学ぶ渡辺

猟師というと、職人の世界です。職人というと、怒声の響く現場で見て覚えさせられるのでは?と不安になりますよね。しかし、殿岡さんは全く逆でした。解体の仕方を教えるときも、わなをかけるときも、まずお手本を見せて論理的に解説をしてくれます。そして、私に実践させてみて、最後にもう一度お手本を見せてくれます。とにかく、教えるのがうまいです。人間性もあって、いつの間にかこの人のために働きたい!と思ってしまう人ですね。

猟師を仕事にできたら、もっと理想の生活に近づけると思います。そんなんじゃ生きていけない、人生あまくない。人生苦しんでなんぼ!なんて言われることもあるかもですが、全部無視します!(笑)

なぜなら、川根本町には実践してる人がたくさんいるから。理想に近づくためにやることはたくさんあるけれど、自分らしく生きるという目標はぶれずに生きたいです。

山を歩く渡辺実優

今後の目標

今後は大学で学んだデザインの技術を活かして、川根本町産ジビエを有名にしたいです。川根本町は移住者が多く起業する人が多い事、限界集落に危機感を持つ住民がいることから他の町よりエネルギーがあるように感じます!新しいことに挑戦しやすい場所。とても楽しいです。

ジビエを起点に町が元気になるためには、ジビエの安定的な収益が必要です。今後は、同大学の松浦あづみとジビエ資源を活用したビジネスを考えていく予定です。

渡辺実優(左)と殿岡邦吉さん(右)

限界集落の川根本町で同時期に若い人がこんなに集まって猟師になろうとしたのは奇跡だと思います。猟を通して若者が輝ける町にしていきたいです。

まとめ】

ベテラン猟師殿岡さん(右)にわなをかける場所を教わる渡辺(左)

川根本町では、今はまだ新人猟師が猟師だけで生きていくのは難しいです。しかし、殿岡邦吉さんのように丁寧に猟師の仕事を教えてくれる人がいる。地域の方が、若者のやりたいことを全力で応援してくれる。

川根本町はヨソモノが地域に溶け込み活躍するために必要な土壌がある町だと思います。今後は、 自給自足やスローライフを求める若者が川根本町で活躍できるように猟師の仕事を整備していく予定です。

次のページでは、猟師の殿岡邦吉さんの娘、平井沙有理さんを紹介します。

【目次

1ページ→みんなの師匠「ベテラン猟師の殿岡邦吉さん」紹介

2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみが考える猟師ビジネス

3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい

4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで

5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観

6ページ→ジビエについて・ジビエ副産物を利用したい方へ

【猟は身近な存在】平井沙有理

平井沙有理さん(わな猟)

静岡県川根本町で生まれ育つ。猟師の殿岡邦吉さんの娘として、幼いころから自然や猟に親しんできた。現在は川根本町役場に勤務しながら週末猟師として猟を学ぶ。

猟師になった経緯は?

私のお父さん(殿岡 邦吉さん)は猟師だったので、小さいころから「猟」は身近な存在でした。

もともと動物や自然が好きだったこともあり、父である殿岡邦吉さんが山に行くときにはついて行くことも。 連れて行ってもらっていたのは危険のない山ばかりですが、そこで父からたくさんの話を聞きました。

 

殿岡邦吉さんがわなをかけるフィールド

また、生まれも育ちも川根本町のため、民家の近くにも野生動物がたくさんいることや、「○○さんちの畑が動物に荒らされたみたいだよ!」という情報をよく耳にしていました。父について行く中で被害を実際目にすることもあったため、このままではいけないなと思うように。

特にご高齢の人は、鹿や猪に畑が荒らされてしまっても自分で動物を駆除するということができません。食べ物を作るというのは本当に大変で、手間暇かけて大事に育てるものです。それなのに動物は、あとちょっとで収穫できる!という野菜を狙ってくるので、農家さんもがっかりしてしまいます。

川根本町のような山奥にある田舎では、町の人よりも畑で作物を育てて自分たちで食べるという文化が強くあります。

本当だったら動物の命をとるというのはあまりよくないかもしれないけれど、動物と人間が共存するのも正直難しい……。増えすぎてしまった野生動物は自然にいなくなるものでもないから、誰かが責任もって駆除しなければいけない。

猟師がいないとどんどん増え続けてもっと被害が大きくなり、とても人間が住むのが大変になってしまいます。そして、(川根本町では)その未来はすぐそこまで来ているのではないでしょうか?

 

ゆっくりと道路を横断する鹿の群れ(5頭いました)

あるとき、テレビをつけると、女性ハンターの番組がやっていました。女性でもハンターになっている人がいる!猟師は男性の仕事というわけではありませんが、女性ハンターは珍しかったので、女性が猟師として活躍する姿に憧れもあったと思います!(笑)

私は学校を卒業後、猟とは関係のない会社に就職しました。しかし、川根本町役場へ転職したことをきっかけに、時間や気持ちに余裕がでるようになりました。そこで、以前から興味のあったわな猟の勉強を始めてみることに。そして2021年には免許を取り、女性ハンターとしてわな猟デビュー!

 

平井沙有理さん(左)と父:殿岡邦吉さん(右)

これからは役場の仕事を続けながら週末猟師をする予定です!本来は毎日猟に行けば習得も早いですが、現実的にそれだけで生活するとなるとまだまだ技術などが必要ですよね。ゆくゆくは猟だけで生活したいと思いますが、そうなるまでには時間がかかると思います。なので今は自分ができる時間に猟について教えてもらう予定です。

初めて獲れた鹿

先日鹿を一頭獲りました。まだまだ師匠である父に教えてもらいながらですが、 獲れると嬉しいです。次は自分の力で獲ってみたいと思うようになってきました。また、初めて 獲れた鹿だから、かなり思い入れがあります。自分が手をかけた子だからこそ、お肉だけではなく毛皮も大事にしたいと思うようになりました。もらった命だから大事にしなければと思います。

今後の目標

せっかくわな猟を始めたので、銃の免許もほしいです。わなから止めさし、精肉まで全てを自分でできるようになりたい。もっと大きな目標としては、みんなで猟をしながら生きていきたい。まずはできるところから、1つ1つやって1人前になります。

私の理想の生活はスローライフ。まだ理想とは遠いです。家族や今後のことを考えると仕事が最優先になります。でも、ゆくゆくみんなで成長し合えたら猟についていろいろと挑戦していきたい。(同じタイミングで猟を始めた)みんなに、それぞれやりたいことはあると思うから協力し合って猟の道で生きていきたい。

父を尊敬しています。殿岡邦吉さんのような人になりたいです。猟の腕を磨き、幅広く知識を蓄え、何事にも諦めない。理想の生き方だと思います。

まとめ】

平井さんは、猟師の父を持ち、幼いころから猟が身近だったと言います。最近では平井さんのような若い女性ハンターが増えています。女性だから獲った獣を運べないのでは?わなを作る際に力が必要なのでは?と心配される方もいるかと思います。平井さんは道路から近い場所にわなをかけたり、わなを自作して自分の力でかけられるわなを作ったりと、師匠と試行錯誤しながら自分に合う猟の形を見つけています。

また、週末ハンターでも気軽に参加しやすいわなシェアリングなどもあります。川根本町ではまだ制度化できていませんが、今後人数が増えていけば川根本町でも実現して、獣害被害の抑止と若い猟師の確保に繋げたいと思います。

次のページでは自然の中での暮らしを目標に生きる勝山翔太さんを紹介します。



【目次

1ページ→みんなの師匠「ベテラン猟師の殿岡邦吉さん」紹介

2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみが考える猟師ビジネス

3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい

4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで

5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観

6ページ→ジビエについて・ジビエ副産物を利用したい方へ

【猟を生活の一部にしたい】勝山翔太

 

勝山翔太さん(わな猟)

静岡県内にある常葉大学 教育学部 生涯学習専攻の4年生。静岡県の伝統工芸である駿河竹千筋細工の職人を目指して修行中。また、家業の農業を手伝いつつわな猟も習得予定。現在、静岡県静岡市にある丸子から車で片道1時間かけて川根本町に来て猟師の勉強をしている。

猟師になった経緯は?

 

殿岡邦吉さん(左)からわなのかけ方を教わる勝山翔太さん(右)

僕の住んでいる丸子は静岡駅から車で10分程のところにあります。最近になって、以前はそこにいなかった鹿や猪の農作物被害を聞くようになりました。理由は猟師が少なくなったからだそうです。先日も、市街地から車で10分程のところで猪や鹿のいた形跡を見つけて……。猟師不足の現状を身近に感じますね。実家が農家ということもあり、誰かがやらないといけないと思いました。

狩猟は大学で食育の課題について考えた時に、猟師の殿岡さんが特集されていた記事を見つけて興味を持ちました。 山の中を生活の一部として出入りしている、自然と共存して生きる生活を知り、川根本町にはかっこいいおじいちゃんがいる。自分もこんな生活がしたい!と思いました。 さっそく殿岡さんに連絡をして、狩猟免許もその流れで取得しました。

現在は大学に通いながら、週に2日ほど猟の見学や勉強をさせていただいています。

 

勝山翔太さん(左)と殿岡邦吉さん(右)

猟師は仕事というよりは生活の一部にしていきたいです。 豚も牛も誰かが殺して僕たちが生きています。 お金で何でも買える時代だからこそ、ものの本質的な価値が分かりづらくなってしまいます。スーパーで100g100円で買ったお肉に心から感謝している人は少ないのでは?猟をしていると、野生動物を捕まえて止めさしして解体まで、全部自分の手でやらなければなりません。当然、大変さや手間を通してモノに対する感謝が生まれてきます。ただお肉を食べるということが、猟師をすると特別なことになります。生活の一つ一つを丁寧に送ることができていると感じています。

理想の生活

現在大学四年生ですが、就職のタイミングで自分のこれからの人生を考えた時に、 満員電車に乗って、「さあ、仕事に行くぞ!」と会社に出勤するスタイルは合わないと思いました。

自分にとって理想の生活は日常の中で出来ることを増やして、自分で全てこなせることです。生活と仕事をあまり切り分けずに暮らしたい。自給自足をして、自然と調和するような生き方をしたい。

大学時代は静岡県の伝統工芸である「駿河竹千筋細工」を体験をしてもらうアルバイトをしていました。大学卒業後はさらに修業して職人になり、伝統工芸を継承する予定です。

不安はないか?とよく聞かれます。もちろん、不安はあります。でも、考えないようにしています。自分の人生、楽しいと感じることを追求していきたいです。

駿河竹千筋細工も、猟師もビジネス感がないのが魅力です。仕事というよりは生活のサイクルの一部。 自然に調和した生き方ができる。

静岡市丸子と川根本町を行き来して感じること

 

川根本町の自然が好きだと話す勝山翔太さん

自分の住む静岡市丸子から川根本町までは山を越えて車で1時間。丸子も川根本町と同じく農業の町ですが、川根本町では流れている時間が全く違うように感じます。川根本町の方がとってものんびりで緩やかな感じ。

川根本町は外から見ると一見観光地でSL、夢のつり橋、温泉があるというイメージだけど、深く関わるうちにそれだけではないと気づきました。川根本町に来て、いいなと思うことの本質は人との繋がりです。

道端でいろんな人に声をかけること、猟を勉強し始めた自分のことをとても気にかけてくれることなど。人と人との繋がりがとにかく厚い町なんだなと感じます。

みんなの距離が近くて共同体である意識を感じられるのに、他所から来た人を拒まず受け入れてくれるというか……。独特の居心地の良さがあります!

あとは、山の中に足を入れるとかなりフィールドが広がって植物や動物の名前を知るだけでも、川根本町ってかなり広いなって思いますね。今は山にある植物、動物の形跡などを知っていくのがとても楽しいです。一生かけて覚えていかないといけないなと思っています(笑) 景色もきれいで車で道路を走っているだけでも楽しいです!

 

ドライブ中に発見・茶畑を歩く猿

今後の目標

まずは本職の駿河竹千筋細工の職人として一人前になります。猟は生活の一部。就職後、仕事を覚えるしばらくの間は猟をお休みすることもあるかもしれませんが、余裕がでてきたらまた再開します。

まとめ】

一般的な就職よりも、自然と調和した生き方に憧れ職人になりたいと語る勝山さん。猟を通して森を知ることが楽しいと言います。猟師や職人、田舎暮らしに憧れる人はたくさんいると思います。しかし、一歩踏み出すのはなかなか勇気がいること。その一歩を踏み出した人に、不安はないかと聞くと、大体の人が「もちろんある。しかし、自分の気持ちに素直になりたい」と言います。数年後に、自分が理想とする生活を送るために、今がある。こういった思い切った決断は、若い世代だからこそ踏み出しやすいのかもしれません。

【筆者の所感

猟師は高齢化・担い手不足となっています。しかし、最近では「スローライフ」や「自給自足」などの生活に憧れ移住した若者が「猟師」に興味を持ってくれています。そして、猟師は男の仕事から、女性も参加できる仕事に代わってきています。猟師に興味はあるけれど、入り口が分からない。猟師はどのような人がなるの?そのような疑問に少しでも参考になればと思います。

また、新人猟師の松浦・渡辺は担い手育成に力を入れる殿岡邦吉さんの指導の下、川根本町を起点にジビエをフルで活用した無駄のない猟師事業を作っていきたいと考え活動中です。応援よろしくお願いします!

次のページでは猟師に興味のある方、ジビエやその副産物の入手方法を記載しています。お気軽にお問い合わせください。



目次】

1ページ→みんなの師匠「ベテラン猟師の殿岡邦吉さん」紹介

2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみが考える猟師ビジネス

3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい

4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで

5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観

6ページ→ジビエについて・ジビエ副産物を利用したい方へ

募集:ジビエの副産物を活用したい人

猟師の不足により人手が足らず、お肉や鹿角以外の副産物の大部分は捨てられてしまっているのが現状です。いただいた命だから最後まで大切に扱いたい。副産物を活用してみたい方はお気軽にご連絡ください。料金、詳細は南アルプスジビエ牧場へお電話にてお問い合わせください。

【内容】

・なめし前の毛皮 活用例:毛皮、革、犬用ガム

・猪、鹿の骨 活用例:ボーンチャイナ(骨の皿)、アクセサリー

・猪、鹿の頭 活用例→頭部の骨の飾り物

 

川根本町産ジビエについて

新規入猟希望者さんへ

まずはご連絡ください!  殿岡 邦吉  TEL:090-2186-7365

 

南アルプスジビエ牧場( 川根本町産ジビエ肉販売 )

TEL:090-2186-7365 FAX:0547-59-2085

住所:静岡県榛原郡川根本町千頭1190-2

 

川根本町産ジビエが食べられる飲食店

Cafe うえまる

Cafe Grandma

Folk knot cafe STIR

シェアきち ※4月から土日のみ

和彩食堂あけぼの

呑み家 鼓童~こわっぱ~ ※通販あり/KADODE OOIGAWAにてジビエカレーの販売

ボン・コラージュ ※ジビエの取り扱いは要お問い合わせ

ひだまりカフェ

旬菜居酒屋 ゆるかも

川根本町産ジビエが食べられる宿泊施設

(ジビエの取り扱いのない宿泊プランもあります。詳しくは宿泊施設にお問い合わせください)

いにしえの風

ウッドハウスおろくぼ

求夢荘 ※食事のみOK!

光山荘 ※要予約。食事のみOK!

ビンタン ビンタン グリーンヴィレッジ ハンモック食堂 ※食事のみOK!

ゆる宿Voketto

川根温泉 ふれあいコテージ

猟師のInstagramはこちらから