【目次】
2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみが考える猟師ビジネス
3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい
4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで
5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観
【猟を生活の一部にしたい】勝山翔太
静岡県内にある常葉大学 教育学部 生涯学習専攻の4年生。静岡県の伝統工芸である駿河竹千筋細工の職人を目指して修行中。また、家業の農業を手伝いつつわな猟も習得予定。現在、静岡県静岡市にある丸子から車で片道1時間かけて川根本町に来て猟師の勉強をしている。
猟師になった経緯は?
僕の住んでいる丸子は静岡駅から車で10分程のところにあります。最近になって、以前はそこにいなかった鹿や猪の農作物被害を聞くようになりました。理由は猟師が少なくなったからだそうです。先日も、市街地から車で10分程のところで猪や鹿のいた形跡を見つけて……。猟師不足の現状を身近に感じますね。実家が農家ということもあり、誰かがやらないといけないと思いました。
狩猟は大学で食育の課題について考えた時に、猟師の殿岡さんが特集されていた記事を見つけて興味を持ちました。 山の中を生活の一部として出入りしている、自然と共存して生きる生活を知り、川根本町にはかっこいいおじいちゃんがいる。自分もこんな生活がしたい!と思いました。 さっそく殿岡さんに連絡をして、狩猟免許もその流れで取得しました。
現在は大学に通いながら、週に2日ほど猟の見学や勉強をさせていただいています。
猟師は仕事というよりは生活の一部にしていきたいです。 豚も牛も誰かが殺して僕たちが生きています。 お金で何でも買える時代だからこそ、ものの本質的な価値が分かりづらくなってしまいます。スーパーで100g100円で買ったお肉に心から感謝している人は少ないのでは?猟をしていると、野生動物を捕まえて止めさしして解体まで、全部自分の手でやらなければなりません。当然、大変さや手間を通してモノに対する感謝が生まれてきます。ただお肉を食べるということが、猟師をすると特別なことになります。生活の一つ一つを丁寧に送ることができていると感じています。
理想の生活
現在大学四年生ですが、就職のタイミングで自分のこれからの人生を考えた時に、 満員電車に乗って、「さあ、仕事に行くぞ!」と会社に出勤するスタイルは合わないと思いました。
自分にとって理想の生活は日常の中で出来ることを増やして、自分で全てこなせることです。生活と仕事をあまり切り分けずに暮らしたい。自給自足をして、自然と調和するような生き方をしたい。
大学時代は静岡県の伝統工芸である「駿河竹千筋細工」を体験をしてもらうアルバイトをしていました。大学卒業後はさらに修業して職人になり、伝統工芸を継承する予定です。
不安はないか?とよく聞かれます。もちろん、不安はあります。でも、考えないようにしています。自分の人生、楽しいと感じることを追求していきたいです。
駿河竹千筋細工も、猟師もビジネス感がないのが魅力です。仕事というよりは生活のサイクルの一部。 自然に調和した生き方ができる。
静岡市丸子と川根本町を行き来して感じること
自分の住む静岡市丸子から川根本町までは山を越えて車で1時間。丸子も川根本町と同じく農業の町ですが、川根本町では流れている時間が全く違うように感じます。川根本町の方がとってものんびりで緩やかな感じ。
川根本町は外から見ると一見観光地でSL、夢のつり橋、温泉があるというイメージだけど、深く関わるうちにそれだけではないと気づきました。川根本町に来て、いいなと思うことの本質は人との繋がりです。
道端でいろんな人に声をかけること、猟を勉強し始めた自分のことをとても気にかけてくれることなど。人と人との繋がりがとにかく厚い町なんだなと感じます。
みんなの距離が近くて共同体である意識を感じられるのに、他所から来た人を拒まず受け入れてくれるというか……。独特の居心地の良さがあります!
あとは、山の中に足を入れるとかなりフィールドが広がって植物や動物の名前を知るだけでも、川根本町ってかなり広いなって思いますね。今は山にある植物、動物の形跡などを知っていくのがとても楽しいです。一生かけて覚えていかないといけないなと思っています(笑) 景色もきれいで車で道路を走っているだけでも楽しいです!
今後の目標
まずは本職の駿河竹千筋細工の職人として一人前になります。猟は生活の一部。就職後、仕事を覚えるしばらくの間は猟をお休みすることもあるかもしれませんが、余裕がでてきたらまた再開します。
【まとめ】
一般的な就職よりも、自然と調和した生き方に憧れ職人になりたいと語る勝山さん。猟を通して森を知ることが楽しいと言います。猟師や職人、田舎暮らしに憧れる人はたくさんいると思います。しかし、一歩踏み出すのはなかなか勇気がいること。その一歩を踏み出した人に、不安はないかと聞くと、大体の人が「もちろんある。しかし、自分の気持ちに素直になりたい」と言います。数年後に、自分が理想とする生活を送るために、今がある。こういった思い切った決断は、若い世代だからこそ踏み出しやすいのかもしれません。
【筆者の所感】
猟師は高齢化・担い手不足となっています。しかし、最近では「スローライフ」や「自給自足」などの生活に憧れ移住した若者が「猟師」に興味を持ってくれています。そして、猟師は男の仕事から、女性も参加できる仕事に代わってきています。猟師に興味はあるけれど、入り口が分からない。猟師はどのような人がなるの?そのような疑問に少しでも参考になればと思います。
また、新人猟師の松浦・渡辺は担い手育成に力を入れる殿岡邦吉さんの指導の下、川根本町を起点にジビエをフルで活用した無駄のない猟師事業を作っていきたいと考え活動中です。応援よろしくお願いします!
次のページでは猟師に興味のある方、ジビエやその副産物の入手方法を記載しています。お気軽にお問い合わせください。