【目次】
2ページ→「猟を仕事に」現役大学生の松浦あづみが考える猟師ビジネス
3ページ→「自給自足」に憧れる地域おこし協力隊の渡辺実優。猟をきっかけに関係人口を増やしたい
4ページ→「猟は身近な存在」殿岡邦吉さんの娘・平井沙有理さんが猟を始めるまで
5ページ→「自然の中で生きる」静岡市から1時間かけて猟を習う勝山翔太さんの猟と人生観
【猟は身近な存在】平井沙有理
静岡県川根本町で生まれ育つ。猟師の殿岡邦吉さんの娘として、幼いころから自然や猟に親しんできた。現在は川根本町役場に勤務しながら週末猟師として猟を学ぶ。
猟師になった経緯は?
私のお父さん(殿岡 邦吉さん)は猟師だったので、小さいころから「猟」は身近な存在でした。
もともと動物や自然が好きだったこともあり、父である殿岡邦吉さんが山に行くときにはついて行くことも。 連れて行ってもらっていたのは危険のない山ばかりですが、そこで父からたくさんの話を聞きました。
また、生まれも育ちも川根本町のため、民家の近くにも野生動物がたくさんいることや、「○○さんちの畑が動物に荒らされたみたいだよ!」という情報をよく耳にしていました。父について行く中で被害を実際目にすることもあったため、このままではいけないなと思うように。
特にご高齢の人は、鹿や猪に畑が荒らされてしまっても自分で動物を駆除するということができません。食べ物を作るというのは本当に大変で、手間暇かけて大事に育てるものです。それなのに動物は、あとちょっとで収穫できる!という野菜を狙ってくるので、農家さんもがっかりしてしまいます。
川根本町のような山奥にある田舎では、町の人よりも畑で作物を育てて自分たちで食べるという文化が強くあります。
本当だったら動物の命をとるというのはあまりよくないかもしれないけれど、動物と人間が共存するのも正直難しい……。増えすぎてしまった野生動物は自然にいなくなるものでもないから、誰かが責任もって駆除しなければいけない。
猟師がいないとどんどん増え続けてもっと被害が大きくなり、とても人間が住むのが大変になってしまいます。そして、(川根本町では)その未来はすぐそこまで来ているのではないでしょうか?
あるとき、テレビをつけると、女性ハンターの番組がやっていました。女性でもハンターになっている人がいる!猟師は男性の仕事というわけではありませんが、女性ハンターは珍しかったので、女性が猟師として活躍する姿に憧れもあったと思います!(笑)
私は学校を卒業後、猟とは関係のない会社に就職しました。しかし、川根本町役場へ転職したことをきっかけに、時間や気持ちに余裕がでるようになりました。そこで、以前から興味のあったわな猟の勉強を始めてみることに。そして2021年には免許を取り、女性ハンターとしてわな猟デビュー!
これからは役場の仕事を続けながら週末猟師をする予定です!本来は毎日猟に行けば習得も早いですが、現実的にそれだけで生活するとなるとまだまだ技術などが必要ですよね。ゆくゆくは猟だけで生活したいと思いますが、そうなるまでには時間がかかると思います。なので今は自分ができる時間に猟について教えてもらう予定です。
初めて獲れた鹿
先日鹿を一頭獲りました。まだまだ師匠である父に教えてもらいながらですが、 獲れると嬉しいです。次は自分の力で獲ってみたいと思うようになってきました。また、初めて 獲れた鹿だから、かなり思い入れがあります。自分が手をかけた子だからこそ、お肉だけではなく毛皮も大事にしたいと思うようになりました。もらった命だから大事にしなければと思います。
今後の目標
せっかくわな猟を始めたので、銃の免許もほしいです。わなから止めさし、精肉まで全てを自分でできるようになりたい。もっと大きな目標としては、みんなで猟をしながら生きていきたい。まずはできるところから、1つ1つやって1人前になります。
私の理想の生活はスローライフ。まだ理想とは遠いです。家族や今後のことを考えると仕事が最優先になります。でも、ゆくゆくみんなで成長し合えたら猟についていろいろと挑戦していきたい。(同じタイミングで猟を始めた)みんなに、それぞれやりたいことはあると思うから協力し合って猟の道で生きていきたい。
父を尊敬しています。殿岡邦吉さんのような人になりたいです。猟の腕を磨き、幅広く知識を蓄え、何事にも諦めない。理想の生き方だと思います。
【まとめ】
平井さんは、猟師の父を持ち、幼いころから猟が身近だったと言います。最近では平井さんのような若い女性ハンターが増えています。女性だから獲った獣を運べないのでは?わなを作る際に力が必要なのでは?と心配される方もいるかと思います。平井さんは道路から近い場所にわなをかけたり、わなを自作して自分の力でかけられるわなを作ったりと、師匠と試行錯誤しながら自分に合う猟の形を見つけています。
また、週末ハンターでも気軽に参加しやすいわなシェアリングなどもあります。川根本町ではまだ制度化できていませんが、今後人数が増えていけば川根本町でも実現して、獣害被害の抑止と若い猟師の確保に繋げたいと思います。
次のページでは自然の中での暮らしを目標に生きる勝山翔太さんを紹介します。